小寺康友が製作したターコイズジュエリーの中でも、ローンマウンテンは特別な輝きを持つ石のひとつだ。
1960〜70年代に採掘された石が大多数を締めるローンマウンテンは、上質で硬度が高いことで知られているが、とにかく数が少ない。大きなサイズはもちろん、原石自体がほとんど出回らないということで、年々希少価値が高まっている。
そんな中、稀有な存在感をそのままに商品化したのが「アイランドリング」だ。
「上質なローンマウンテンは、石が生成される過程で小さな粒子が入り込み、他の不純物が混ざって大きくなると『メトリックス』と呼ばれる線になっていきます。線自体が石に交じり合い、石の成分が積層して圧縮されて硬くて美しいターコイズができあがるのです」
ローンマウンテンは、深い蒼の中に黒や金茶色の線が網目状に入る「ゴールデンウェブ」が最上級とされている。その一方で、カットしたり加工したりする際、この線の部分から割れてしまうこともよくある。
ターコイズは他の宝石と異なり、きれいにカットされ、美しい光を放つものだけが最上とは限りません。ネイティブ・アメリカンが荒野で見つけた蒼い光に神の力を感じたように、大地の中で育まれたからこそ、ひとつとして同じ色や形のものがなく、様々な形であることにこそ価値があるのです」
アイランドリングという製法が取れたのも、小寺自身がジュエリーを製作しているからこそ。原石からのカットや万が一割れてしまった場合の補修の技術があるため、貴重なローンマウンテンを惜しげもなくジュエリーに仕立てられたのだ。
このリングでは、透明感のある青に合わせてプラチナをチョイス。シルバーの色と組み合わせた時にターコイズが映えるバランスを考えている。
「基本的に指輪って、手を綺麗に見せるとか、存在感を演出するとか、いろいろな見せ方があると思うんです。日本では結婚指輪くらいで、あまり指輪を付けませんが、もう少しロマンティックにしたいんです」
小寺いわく、“ぼこぼこの違和感”こそがこのリングの魅力だ。裏を返せばそれは存在感。指に自信がない人でもそこに目がいき、誰もがその人を忘れないだけの個性とインパクトが生まれる。
「綺麗なジュエリーは買って飽きたら終わりです。僕は、目がつまらなくならないデザインと大きさを追求していきたいんです」
ローンマウンテンを使ったアイランドリングは、ゴールドとプラチナの2つのデザインがラインナップされている。ターコイズは一期一会、二度と同じ石には出会えない。その表情と魅力を写真でじっくり見定めてほしい。
1970年頃に採掘されたLone Mountain の中に、目を見張る石がある。
色合いの良さに加え、硬度が高く粘り気もあり、それによって強い艶が生まれ、割れにくいから、永く使い続けられる。
[今や入手困難な1970頃のLone Mountain ]
しかしその時代のスーパーハイグレードのLone Mountain のルースはほぼ出回らず、新たに入手する事は困難を極める。
小寺が長年を掛けて信頼関係を築いてきたオーナーから、一族の家宝とも言えるナゲット(塊り状の原石)を年にいくつかを小出しに提供頂き(とても高価)、それを自らカットし磨き上げている。
[アイランドリング]
厚みがある高品位のLone Mountain のナゲットは通常、真ん中から2枚におろし複数のジュエリーを制作する。
その観念を打ち砕くのが、アイランドリング(Island Ring )だ。
あえて石を薄く切る事をせず、原石の迫力のままの石をセットしたリングである。
石を薄く切っていないことで、バッキングがなくても強度が保持される。
(多くのターコイズのルースは、薄くカットした石の裏側に樹脂などで出来たバッキングを付着させて強度を確保している)
長く装着しているうちに、どうしてもリング自体には小傷がつくが、硬度の高いLone Mountain は益々と艶が出る感じがする。
着用しているうちに裸眼では見えない石の表面のスクラッチが消えて滑らかになるからかもしれない。
石が愛おしくて手触りの良い石の凹凸を無意識にも撫でてしまう。
プラチナに浮かぶターコイズの青い島(Island)
このリングを手にすると、贅沢な風景に、思わずうっとりすることであろう。
石の大きさは最大 縦 約22mm、横20mm 重さ約79g。
色が濃く、山あり谷ありの立体的な石で、とにかく物凄い迫力です。
■Category: | Ring |
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■Artist: | Yasutomo Kodera |
■Origin: | Lone Mountain |
■Size: | 19号 |