マトリックスも美しい大きなローンマウンテンのターコイズを中心に、オパールやサンゴ、ゴールドバーを見事な造形で組み合わせたこのリング。
作者はレイモンド・ヤジー(Raymond C.Yazzie)。巨匠リー・ヤジー(Lee Yazzie)の実弟であり、ヤジー兄弟はともにトップクラスのアーティストとして活動している。兄のリーは年間の製作数がとても少なく、現役作家の中でも最も作品の入手が困難な作家だが、弟のレイモンドもそれに引けを取らない、作品数の少なさと貴重さで知られている。
”Yazzie Family”として知られる著名なジュエリー作家一族に生まれたレイモンドは幼い頃、14歳年上のリーの作るジュエリーの石を磨くところから修行を始めたと聞く。兄に鍛えられ腕を上げ、押しも押されぬ作家となった。
作品のデザインの素晴らしさと仕上げの緻密さは兄と同様だ。以前レイモンド本人に「制作の前に石の組み合わせのデザイン画を描くのか?」と尋ねた事があったが、「Secret!」と笑顔で返されてしまった。愚問であった。
デザイン画の存在はともかく、彼の頭の中には立体的な構図と色彩が、見事に描かれているに違いない。
「カミソリの刃一枚も入らない」といわれるインカ文明の城壁のように、このリングは隙間なく厳選されたジェム(宝石)が、インレイ(象嵌)されている。ハイグレードのターコイズしか使わないというこだわりと、なめらかで美しいインレイワークが、あますところなく発揮されたこの作品は、彼の作品の特徴を見事に体現している。デザインのバランスと色彩感覚には、感嘆するほかなく、彼だけが表現できる世界が、小さなリングの中に凝縮された一品となっている。
■カテゴリ: | Ring |
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■作家: | Raymond C. Yazzie |
■産地: | Lone Mountain |
■サイズ: | 19号 |