まず紹介するのは、ターコイズファンの間で最も人気の高いナンバーエイト。
この石は1950年ごろからずっと眠っていた石で、アメリカの友人が秘蔵していた石をようやく手に入れ、しばらく手元に置いたもの。それを生かした少し手の込んだデザインのリングを製作した。
突き抜けるような鮮やかなスカイブルーと、スパイダーウェブが均等に入った石はもっとも価値が高い。この石もマトリックスは細い線で、色もブラックであり、価値が高い条件を、すべて備えているといえる。
この石は1950年か51年のどちらかに出たものだ。この時代は、ナンバーエイトで一番いいといわれている時代で、石がよく採れたためにこうした美しい五角形のカットが可能になった。石はとても薄く切られており、それは硬い石の証だ。
今では石が採れると、フリーバロックといって、丸形や五角形にきれいに切らず、石の原石のままに、ひょうたんのようなぼこぼこの形に切ってしまう。しかし、この当時はいいカッターがいたので、周りが白くなっている部分を取り除いて、真ん中のきれいな部分だけを切り出すことができた。
ナンバーエイトはもう山がなく、加工して染めた石も数多く出回っているといわれる。今はこのような石はなかなか出てこないのが現実だ。
石のまわりの枠であるシルバーのベゼルはわざとプレーンにして、普通よりも少し厚みをつけている。
ベゼルは、三角形のワイヤーを使えば簡単にできるが、この作品は石の形ぴったりに一枚の銀の板を抜き、そこにはめ込んでいる。そのため、まわりの継ぎ目もなく、美しくディテールが楽しめるはずだ。
シャンクは3本に割っている。エジプト文明のリングのような、蓮の花のようなイメージで、三角形のように開くフレアを形作っている。
独特な叩き方をするとこのように開いたフレアが完成する。このような作品は技術が必要で、自分の気持ちが乗らないとうまくできない。この石を生かすために、こうした手の込んだデザインをしている。
この時代に切られたナンバーエイトは、もともと、バッキングという補強材がついていない。しかしそのままでは割れる可能性があるので、バッキング代わりに銀の板をうしろに貼り、その下にまたクッションをつけている。これでしっかりとした強度を出している。
こうした処理を行うのは、リングを24時間着けていてもらいたからだ。特別な時だけするリングではなく、日常生活で使えるもの。リングを製作するときは、そのために細かなデザインの配慮もしている。きちんと処理は行っているので、お風呂に入っても問題ない。
美しいナンバーエイトのヴィンテージ・ターコイズを、日々指に着けて、日常を豊かに彩ってほしい。
今回のコレクションでは、その上をいく最上級のヴィンテージ・ターコイズのみを揃えている。今後、これと同様のクラスのヴィンテージ・ターコイズがまとめて出てくる機会というのは、なかなかないだろう。
小寺康友がこれまで秘蔵してきたヴィンテージ・ターコイズの極上品を「2020リザーブドエディション」として特別に紹介するコレクション。このナンバーエイトは、その深い青やマトリックスの美しさが際立った一品。
■カテゴリ: | Ring |
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■作家: | Yasutomo Kodera |
■産地: | Number Eight |
■サイズ: |
石の大きさ:最大縦 約27mm×横12mm リングの重さ:約32g コインシルバーと同じ成分の銀板を叩いてタガネとヤスリでリングを手作業で作っています。 サイズ:22号 |