キャンデラリアは、ネバダ州トノパ近郊のキャンデラリア山脈にある銀山で採れたターコイズ。1800年代から金や銀などの採掘で賑わったが、ターコイズは主に1970年代に産出している。
この指輪に使われている石は、その銀山で働いていた鉱夫が弁当箱の底に忍ばせて家に持ち帰っていたもののひとつだ。
その石は周囲が真っ茶色で、一見なんの石なのかわからない。本人も判別する術を持たず、長年お守りのように保管していただけだった。バーと教会くらいしかない当時の街では、仕事の合間に転がっていた石を集めるくらいしか趣味がもてなかったのかもしれない。
それがターコイズの原石であったとわかるまでに、実に30年以上の年月がかかった。
2005年頃、その鉱夫がターコイズ鉱脈に詳しいオッティソン一家に石の鑑定を頼んだ。カットしてみると、真ん中に真っ青なターコイズが入っていた。それがこの石だ。
その時鉱夫がオッティソン一家のところに持ち込んだ袋いっぱいのターコイズのほとんどは、現在スカイストーンが所蔵している。そしてこの石は、オッティソン一家から譲り受けた石の中でも、最も良質な最後のキャンデラリアだ。
今回のデザインのアイデアは、インディアン・ジュエリーコレクターとしても知られ、ココ・シャネルと同時期に活躍したファッションモデル、ミリセント・ロジャースの作品からインスパイアされたもの。彼女が作った無骨な指輪を現代風にリバイバルした。
石のサイズから指輪としては重くなってしまうため、サイズに合わせてシャンクが流れていくイメージに仕上げた。石自体には枠をつけずに、ツメのひとつひとつを丁寧に削り出している。インディアン・ジュエリーという枠にとらわれず、シンプルにキャンデラリアを美しく魅せるという、自由な発想で作っている。
石単体で見てしまうと、アーティストとしてはその存在感を生かして、どうしてもバックルやペンダントにしたくなるところ。しかし、それでは当たり前すぎて面白くない。あえて指輪として、それも薬指などにつけることで、その違和感を楽しんでほしい。
ネバダの乾いた青空のように透き通るスカイブルーと、その中に刻まれたマトリックスが、目にした人に深い蒼を見せてくれる。
小寺康友がこれまで秘蔵してきたヴィンテージ・ターコイズの数々。世界的にも貴重なターコイズ・コレクションだが、そのなかでもクオリティーが高く、現代のファッションに合わせて身につけてもらいたいと思うターコイズを厳選し、「2020リザーブドエディション」として、特別に製作したリングを紹介する。
働いていた鉱夫が弁当箱の底に忍ばせて家に持ち帰り秘蔵していたという、このキャンデラリア。時を経て現れたのは、極上のクオリティーのターコイズだった。ドーム型のフォルムも美しい希少なリング。
■カテゴリ: | Ring |
---|---|
■作家: | Yasutomo Kodera |
■産地: | Candelaria |
■サイズ: |
石の大きさ:最大縦 約23mm×横24mm リングの重さ:約42g サイズ:15号 ※円形にゆがみがあるためゲージ棒だと12号ですが、実際は15号~16号の大きさになります。 コインシルバーと同じ成分の銀板を叩いてタガネとヤスリでリングを手作業で作っています。 |