ブルーウィンドという鉱山は、ほとんど知られていない山だ。1970年代の本にはブルーウィンドの情報が少し載っており、山の所有者は、あのナンバーエイトを採集したというエドガー家。エドガーは、ネバダのクレセントバレーという、ランダーブルーの鉱脈の近くに住んでいた。クレセントバレーはトルコ石がアメリカで一番とれる場所で、月型の谷の両側が山でほとんどの石が採掘されているので、ブルーウィンドはその一角だといわれるが、場所も詳しく分かっていない。
しかし、70年代には素晴らしいターコイズが産出されたとされる。インディアンジュエリー界の巨匠であるチャールズ・ロロマも一番いい石を使っていた時代に、このブルーウィンドのターコイズも使っているのだ。
そして、そのことを証明するかのように、このターコイズは、70年代に産出されたもののなかでも、トップクラスに位置する最高の品質の石だといえる。
このターコイズでまず目を奪われるのは濃いブルーの色合い。そこに均一な網目のゴールドウェブがかかっている。こうした美しいゴールドウェブは、なかなか出てこないもので、整った五角形の石の形をみても、このターコイズが、この時代を代表するようなクオリティーの非常に高いものであることがわかる。
ブルーウィンドの石をいくつか扱ってわかることは、とても硬いということ。傷もつかず、ここからも高い品質が感じられる。とはいっても、石としては本当に数が少なく、持っているコレクターも相当に少ないはずで、なかなか鉱山の特徴をとらえるのは難しい。
こうした貴重な石をどのようにジュエリーにするかの構想はあった。
作品のポイントは、まずベゼルの18金。これ石のゴールドウェブに合わせて採用している。また、シルバーの台座部分はわざと大ぶりに作っている。金のベゼルとシルバーの間には深い溝はできるようにつくり、ここにできる影によってターコイズがより光を得て美しく輝くようにデザインされている。
シャンクのサイドの部分には、飾りのパーツを入れている。これはインディアンジュエリーの特徴といえるもので、古くは細い銀のシャンクをこうしたパーツで補強しようとつけられたものだとされている。
こうしたクラシックな意匠も取り入れつつ製作されたリングは、ブルーウィンドの希少なターコイズを金とシルバーの光と影で豊かに彩るものとなっている。
小寺康友がこれまで秘蔵してきたヴィンテージ・ターコイズの数々。世界的にも貴重なターコイズ・コレクションだが、そのなかでもクオリティーが高く、現代のファッションに合わせて身につけてもらいたいと思うターコイズを厳選し、「2020リザーブドエディション」として、特別に製作したリングを紹介する。
ブルーウィンドという鉱山は、なかば伝説と化した山だ。本当に数が少なく希少なだけではなく、あのチャールズ・ロロマも使った石ということもまた、この山の伝説に1ページを加えている。
■カテゴリ: | Ring |
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■作家: | Yasutomo Kodera |
■産地: | Blue Wind |
■サイズ: |
石の大きさ:縦約26×横11mm リングの重さ:約37g サイズ:21号 K18ゴールドベゼルが石をさらに引き立てています。コインシルバーと同じ成分の銀板を叩いてタガネとヤスリでリングを手作業で作っています。 |